ヨコハマメリー

2006/07/07 - 11 Comments »

Message from NEMO

「ヨコハマメリー」という映画。

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横浜にひとりの老婆がいた。全身まっ白である。
服装だけでなく、顔の化粧にいたるまで白い。白いと言うより、
まっ白なのである。

僕は、実際3回見たことがある。
いずれも椅子やベンチにうなだれたように座っている姿で、立って
歩いている姿は見たことが無い。

「化け物がいる」
小学生だった当時の僕には、その人物がいったい何者なのか?
探る気持ちも無く、ただただ得体の知れないその「まっ白」に
出くわしてしまったことを怖がっただけであった。

「メリーさん」

僕の両親もそう呼んでいた。横浜に住んでいる人なら
ほとんどがその存在を知っている。だが、正体は誰も知らない。

今回、「ヨコハマメリー」と題したこの映画は、そんなひとりの
老婆と、それを取り巻く人々、そしてヨコハマという街の実体に
触れるものであった。

「そうだったのか。。」実に安直な感想であるが、メリーさんに
ついても、僕の生まれる前のアメリカだった頃のヨコハマについても
知らなかった事実が次々に映し出されていた。
思えば、なんとなく暮らしていた自分の街の点と点が、さまざまな
関係性を知ることにより、線になってゆく。映画に映し出されていた
ものに実際に触れていたのだから、よりいっそう重みは増す。

以前、僕がFMヨコハマで番組をやらせていただいたときに紹介した
ことのある「天使はブルースを歌う」を書いた山崎洋子さんも
登場する。この本ではもちろん「メリーさん」について書かれてもいるが、
もうひとつのコンテンツとしてゴールデンカップスというバンドについて
も書かれている。エディ藩氏を中心としたリズム&ブルースバンドで
あったが、多くの米兵が闊歩する当時のヨコハマの状況から生まれるべく
して生まれた本物のバンドであった。そのエディ氏が経営に携わっていた
ブルースカフェという店が本牧のジョイポリスの脇にあった。
本国から本物のブルースマンたちを呼び寄せ、ライブをするという
とてもありがたい場所であったが、今はない。スヌークス・イーグリン
やオーティス・ラッシュなど。ジョニーギターワトソンがこの場での
ライブ中にぶっ倒れて逝ったのは有名な話である。僕はその店に何度も通い、
太ったおじさんがいつも座っているな。。と遠めに眺めていた記憶が
ある。それがエディ氏であった。

また、清水節子という女性も映画に登場する。
僕はこの名前も鮮明に覚えている。なぜなら僕ら小学生のあいだで、
ある怪しい電話番号へ電話するのが当時流行っていたからである。
621-99○○。いまでも番号まではっきり覚えている。
その番号にかけると、「清水節子でございます」と音声が流れ始め、
「汚れたパンティー3000円。ラブジュースは5000円」と
ゆったりとしたエロい声で話し始めるのである。
僕らは面白がって、何回も何回もかけた。
「ラブジュース?」ってなんだ?謎である。その女性が実在すること、
そして画面に映し出されていることに変な感動を覚えた(笑)

さておき、このように実際に触れていたことも映画に映されていたので、
感慨もひとしおであった。

ラストシーンは衝撃であった。
人生と言うものがどんな言葉でも形容できないことを改めて知った。

「メリーさん」

背筋はグイっと折曲がってしまっていたが、
こころは曲げずに伊勢佐木町を歩いていた。
何年も。何年もである。

象徴だの、存在意義だの、そんなものは後付でいい。
ただ、ひとりの人生であった。

NEMO

天使はブルースを歌う―横浜アウトサイド・ストーリー
天使はブルースを歌う―横浜アウトサイド・ストーリー 山崎 洋子




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11 Comments

くらげ Writes:

私は横浜は修学旅行でしか行ったことがないので知らないのですが、そのメリーさんが出てくる歌があって、気になっていました。是非観てみたいと検索したら…こっちでは上映してませんでした…がーん。。。

Tomo Writes:

ヨコハマメリー。初めて聞く話に、なんとなく不気味な印象を受けて、
恐る恐る映画「ヨコハマメリー」のHPに行ってみました(笑)
この人が・・と、ちょっとドキドキしながら見てしまいました。
実際に触れていた街や人、その未知な部分も映し出されているなんて。
ネモくんがこの映画で受けた感動、しっかり伝わってきましたよ。
横浜は何度か行ったけど、何度でも訪れたくなる魅力的な街ですね。
近いうちにまた行きたいなぁ~。。。
怪しい電話の遊びって、私が子供の頃からありましたよ。
内容は知らないけど、男子が盛り上がっていたのを思い出しました(笑)

tajee Writes:

私はお家が東京ですが家族とのお出かけは昔から神奈川方面でした。昔はもっと雑踏の中にあったような…子供ながらに恐怖と興味とわくわく感が入り交じった不思議な感覚をもってました。先日も映画を見た人がいて会社で当時のメリーさんについて話し合ったりしてました。映画では知ることができないはなしも聞きましたがなぜかせつなさが残りました。

それから….『ネモの作り方』でコメントの方が良いのかもしれませんが…銀座のソニービルで浅井慎平さんのとられたビートルズの写真展が開催されてます。7/17までです。

matcha-ice Writes:

ネモ先生、こんにちは
今回のお話、大変興味深く読ませて頂きました
私も実は横浜市在住ですが、何せ新参者で「メリーさん」のことは知りませんでした
ただ、お芝居だったでしょうか?
何か駅のポスターで見たような記憶があります
早速、「天使はブルースを歌う」を読んでみたいと思い、図書館で検索してみたら残念、貸出中でした
そんな訳で、山崎洋子さんの別の本を借りて来て読みました。
そこには、メリーさんも若く美しかったであろう時代の横濱が鮮やかに描かれていました
この街のことをもっと知りたくなりました
是非、映画も見に行こうと思います

さくら Writes:

こんばんは、ネモくん☆
今回の話しは、とてもおもしろかったです。ヨコハマメリー、観てみたくなりました。
でも、私の住んでる街では上映してないかなあ、残念。
山崎洋子さんの本、読んでみようと思います。

マッキー Writes:

私コトですが、幼い頃からかわいがってもらっていた祖母が亡くなりました。

息を引き取る前に高速を飛ばして顔を見に田舎に帰りました。苦しそうですが、病室のベットでどうにか息をする祖母に会う事ができました。

車の中でcoolをずっとかけました。何だかとても力強くて、懐かしくて・・・
おばあちゃんとの思い出以外にも友達とnemoのライブに行く時もいつも聴いてたの思い出しました。一緒に歌ったり、感激したり・・・
全然関係なくてすいません・・・

ヨコハマメリーはきっとこっちでは上映しないかな?でも見てみたいです。
見たら横浜っ子になれるかな(笑)

SODA Writes:

ハマのメリーさん。
たぶん私の年代の関東圏の人なら知ってる人多いと思います。私は18まで埼玉に住んでいましたが知っていました。1度だけ見かけた事もあります。
フォークシンガーの方の歌でメリーさんが歌詞に登場する歌もありましたよね。
横浜が舞台の映画でもこれは、と思わせるシーンがあるものも。
しかしNEMOもブルースカフェに行っていたのね。いろんな意味で納得しながら読んでしまいました。

NIKA Writes:

はじめまして初めて書込みします~
CDMのファンで、もちろんネモさんのファンです

なんで書込みしたかというと今読んでいる
角田光代さんの「これからはあるくのだ」というエッセイに「夏のマリー」という題名の話があって、それがどうもメリーさんのようなのです。容姿もそうだし場所もそうだから。

エッセイを読んでいてどこかで聞いたような話と思っていたら、このネモさんのブログの話でちょっとビックリしたので書込みしました~

yochi Writes:

私はNEMOさんより一つ年上の横浜育ちです。
通勤中はいつもCOOLの曲聴いてます。
私の周りでは横浜駅近辺にいつもいた、別のホームレスの女性を何故かメリーさんと呼んでいました。どこかで間違ってしまってたんですね。。本物のメリーさん、見たことがあるような、ないような。。とにかくすっごく気になってしまったので、今度映画に行くことにしました。

けいいち Writes:

広島在住のものです。
今日やっと、広島でこの映画が公開されました。初日は監督の中村さんと写真家の森さんの舞台挨拶もありました。
で、観にいってきました。
あの若さでこの映画を撮った監督さんに驚きでしたし、久々にすばらしい作品に出会えました。
このブログで「ヨコハマメリー」という映画があることを知ったので報告でした(^_-)-☆
ありがとうございました。

kemukemu Writes:

はじめまして。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
ときどき寄ってみてください。
ヨコハマメリーをとりあげました。

http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611