「ここ分解禁止って書いてあるだろう。
ここから先は分解できねえんだよ｣

え～！！

 

というところまでが前回。

では、そのつづきを。

 

確かに、そこには「分解禁止」という文字が刻印されていました。
分解禁止と書いてある板の後ろ側にちらっと見えているゼンマイ。
どうやらその何重にも巻かれているゼンマイが、その板をはずすと
飛び出てきて危険らしいのです。

おじいさんは、「もう限界だ」のようなことを僕に言ってきました。

これには僕も、このおじいさんにとって限界であることは理解できました。

と、同時に直す方法は１つしかないこともわかりました。

このエンジンは、ねじをはずすとパカッと２つになります。その片方に
ゼンマイがついているのです。ゼンマイだけが壊れているのですが、
分解できないのでゼンマイだけを直すことは出来ません。
要するに、そのゼンマイの付いている片方を全部交換すればよいのです。

「おじさん、ＨＯＮＤＡにこのパーツあるか聞いてみていいですか？」

「う～ん、ないと思うよ」

「この片方のパーツさえあれば、それをくっつければ、直るんですよね？」

「ああ、それなら大丈夫だ」

「ちょっと、またＨＯＮＤＡに問い合わせてみます。また２、３日後に来ますから」

「ん～、うち狭いんだよ。しょうがないな～」

明らかに、僕のバイク１台くらい十分置いておけるスペースがあるのに、
おじいさんは本当に嫌そうな顔をしました。

「すいません、すぐ聴いてきますから」

僕は、またまた強引にバイクを置いて、店を後にしました。
数日後。

 

僕はバイク屋に行きました。
すると、おじいさんではなくて、おばあさんがいました。

「あの～、パルフレイのものですが、、、。｣

「あ～、このバイクね。いまおじいさん出かけてるんだよ」

おじいさん同様、あまり愛想のいいおばあさんではありませんでした。

「あの、言付けお願いできますか？」

「あ～いいですよ」

「あの、明日、ＨＯＮＤＡの○○さんって方から、ここに電話が来るんです。
なんかこのバイクの状況を直接聞きたいらしくて。なので、おじいさんに
電話がかかってくるのでお願いします。って伝えていただけませんか？」

すると、おばあさんはちいさな紙を取り出して、メモをしてくれました。

あ～おばあさんに伝わったみたいだ。よかった。と思ったのもつかのま。

「あのね、なんかだいぶこのバイクここに置いてあるでしょ？おじいさんと
いつ取りに来るんだろうね？って話してたところなのよ」

「あ～、はい。」

おばあさんは、梅干のような顔をしながら話を続けました。 

「でね、まあ、なんだね、、。なんか気持ちだけでもいいから、少し置いてって
くれたりしたらねえ、、、。長く置いてあるからねえ、、。」

ん？？？

お金の話？

おばあさん、案外がめつい？？

あばあさん、言われなくても、そうするつもりでしたよ！言わなくても！

 

まあ、普段着（ジャージ姿）で、ゆるい格好をした僕は、礼儀知らずの
得体の知れない若者に見えても仕方あるまい、、。おばあさんも心配
なんだろう。と、すこしへこみながら店を後にしました。
じゃあ、今度は背広にネクタイで来てやるぞコノヤロー！

 

つづく。

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