吐月峰 (静岡旅行記6)
2007/07/25 - 3 Comments »
Message from NEMO
次に向かった先は、こちら。
吐月峰(とげっぽう)と読みます。
おじさんおばさんたちは皆、1度は訪れているようでした。
父も母も、昔来たことがあるようでした。
僕は初めてで、ここがいったいどういった場所なのか?
何も知らずについていきました。
竹やぶに囲まれた門をくぐりぬけると、ちいさな受付がありました。
入場料を300円払うと、左奥にひっそり佇む建物(写真上)に
案内されました。
建物の入り口、玄関の所に、清楚なおばあちゃんがひとり
座っていました。
「どうぞ、こちらへ」
そのあばあちゃんは、僕たちを広間へ案内し、座らせました。
そして自分も座り、綺麗な日本語でゆっくりと解説を始めました。
最近では、録音された音声案内であったり、人が説明するにしても、
ガイドラインに沿った機械的な口調であったりすることが多いなか、
このおばあちゃんの案内は、とても人間的で、僕たちにちゃんと話し
かけてくれていました。
「人が人に話す。」ごく自然で、あたりまえのことであるのに、
なんだか嬉しくなりました。
今川義忠と氏親に仕えた連歌師・宗長が永正元年(1504)55歳で
草案を結び余生を送ったところ。だそうです。
聞いた中で、歴史的背景はさほど覚えていませんが、
僕は、この建物を作った人と、そこに関わった人達の思いに
興味がありました。
「左側のお庭を見てください」
見た先のお庭には、林があり、その向こう側はるか遠くに山が見えました。
おばあちゃんは言いました。
「宗長は、あの山までを、庭としました」
この宗長さんは、京都の文化を、ここ静岡において広めようという目的を
もって、ここを建てたようです。ここに集まる人と一緒に、お茶をたてたり、
歌などを詠みながらして、京都の文化を伝えていたようです。
「正面の庭を見てください」
そこにも林があり、1箇所だけ、くぼんでいました。
そのくぼみから、今度は隣の山が、突き出るように見えていました。
こちらも同じく、この山を含めての庭なのでした。
その庭の中央あたりに、小さな石がありました。
おばあちゃんは、建物のちょうど反対側の庭へと招きました。
「あの小さな石に腰掛けて、この反対側のお庭の上に出てくる月を
眺めたのです」
月が出てくるというそのお庭には、背の高い竹やぶがありました。
その生い茂る笹の葉の上から月が出てくるのです。
まるで、笹の葉が月を吐き出しているかのようなので、
ここが吐月峰と言われるようになったみたいです。
ここで、庭を見ながら、月を見ながら、歌を詠んだ人達。
実際にそうしていたことをリアルに想像すると、時間を越えて、
僕は身近に感じてしまいます。偉人でもなく、偶像でもなく、
時代は違えど、同じ人間がここで楽しんでいただけのことですからね。
でも今より少し、楽しみ方が贅沢に思えます。
遠くの山をも含めて、庭だとするなんて、
素敵なスケールではありませんか。
ひととおり、この建物を見て回ると、おばあちゃんは
「というわけで、本日はありがとうございました」と
締めくくり、後は自由行動になりました。
(かやぶき屋根の裏側)
親戚のおばちゃんが、
かやぶき屋根の裏側を見れるなんてあまりないわよ。
と、嬉しそうに眺めていました。
というわけで、親戚一同は、解説してくれたおばあちゃんにお礼を言って、
吐月峰を後にしました。
車の中で母と話していたら、母は、笹の葉が月を掃くようだからでしょ?
と言うのですが、僕は吐月峰という名だから、「掃く」ではなくて「吐く」
じゃないの?と、お互い「どっちだっけ?」みたいな話になりました。
まったく、ついさっき聞いた話なのに、いいかげんな親子であります。笑。
どちらか明確に知っている方がいれば、教えてください。
ではでは。
しづ Writes:
調べてみましたけど、やっぱりネモさんのが正しいみたいですね。
☆月見石に座っていると竹林が名月を吐き出すように見えるから☆との事です。
なんだか夜に訪れたくなりますね♪特に十五夜とか… 行きたいなぁ。でも5時閉館なんですよね~(:_;)
2007/07/26 at 17:18
Tomo Writes:
なにかとっても風流な場所のようですね。
建物や庭の情景や、清楚なおばあちゃんの人間的な温かい案内・・。
行ってもいないのに、その様子が想像できるようです。
何百年もの時を越えて、同じ場所で月を眺める・・・
時の隔たりがあっても、同じ人間、想いは一緒なのでしょうか。
なんか素敵ですね。
あ、でもここは、夜は開いていないのですか?
竹やぶから吐き出されたような月を見上げられたら、
もっと素敵でしたね。
ネモくんも、歌が浮かんできたかもですね。
2007/07/26 at 21:15
☆★☆サマンサ☆★☆ Writes:
読んでいて自分もそこにいるようなとっても穏やかな気分になりました。
「人が人に話す」
・・・確かに人が人に話すように案内をしてくれる所は珍しいですよね。
機械的にマニュアル通りに説明をする人がほとんどですし、それを聞くにしても聞き流すにしてもそれぞれ自由。
でも語りかけるように説いてもらえると、深く印象に残りますよね。
ステキな所ですね^∀^
2007/07/30 at 00:20